昨日公開したインタビュー記事「女子だからと優遇されるのは、ビジネス面で負けてる証拠。女性起業家・関口舞に聞く。」に補足。女性が仕事的な意味では身の丈に合わないレベルの人に、「女子枠」で出会い、それを自分の実力による人脈だと勘違いする「人脈のフライング」について記事でもお話させていただきいろいろ反響をいただいたので、ついでに具体的な失敗談と自分なりの教訓でも書いておこうと思う。

photo by pakutaso

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大学生の頃、無邪気で世間知らずだったため、「いろんな社会人とか、有名な社長さんが来るからおいでよ!」と誘われた会合などに、純粋に勉強のつもりで、社会人訪問の気持ちで出席していた時期がある。たいてい、その有名な社長さんとやらは、ただ若い女の子と遊びたいだけというテンションで、女性陣も女性陣で、そういう男性との個人的関係を期待している人が多く、皆様があられもないような服装をしていらっしゃる中、OB訪問くらいのつもりでリクルートスーツを着て参加した私が完全に浮くというケースもあった。「お〜!リクスーって逆にエロいね(笑)」とか言われた気がする。世も末。本当に馬鹿げている。

そのようなことが、六本木ヒルズレジデンスとか、リッツ・カールトンレジデンスとかでも行われていた。「ピカソの絵がある」「〇〇の著者が来る」と言われて、その本のファンだった私はサインをいただくつもりで意気揚々と本を持参して馳せ参じた結果、最悪の光景を目にしてしまったこともある。シャンパンを飲み過ぎて床に寝そべっている女性の上におおいかぶさるようにして楽しそうにイチャイチャしている男性こそが、大変残念ながらその著者の方だった。お邪魔しても申し訳ないのでそっと本をかばんにしまって、せめてピカソの絵とやらを見てから帰ろうと思ってきょろきょろしていると、その絵というのは壁に立てかけて床に無造作に置いてあり、ストッキングを半分下ろした女性が絵にもたれかかるようにして眠っていた。

芸術家というのは、自分が生み出した作品をその後どう扱えるかまでは選べない運命である。私はピカソになりかわり勝手に心を痛め、さっさと会場をあとにした。色々な有名企業の方や経営者の方に名刺をいただいたけど、もう誰の名前も覚えていない。少なくとも、そんな会合で出会った女という意味では、私もそのへんでつぶれていた女性と同じカテゴリーに入れられてしまったと思う。残念の極みだった。すばらしいお酒やピカピカのグラスが無数に並んでいたが、そんな場で、ドンペリも、高いワインも全然飲みたいと思わない。水で結構。ワインは、素敵な人と、ゆっくり静かに飲まなければ。上等の赤ワインを大騒ぎしながらがぶがぶ飲んで口の周りを赤黒く染めて酔って潰れているなんて、なんの情緒もないし、しかも危ない。

 

これは極端なケースだが、基本的には、自分が何者でもないときに、六本木やら、麻布やらのどこかの変なパーティーなどで知り合った相手と、その後しっかりと仕事でご一緒するようなことはなかなか難しいと思う。私が当時もっとしっかりとした実力や実績があればその限りではなかったのかもしれないが、ただの女子大生がそういった下世話な飲みの場にいたら、普通に考えて「そういう女」として認識され、仕事軸では相手にしてもらえないだろう。そのような場から仕事的なメリットに持ち込むコミュ力を持ち合わせている人もいるのかもしれないけど、そのためには多少こちらも何か見返りを与えられないと厳しいケースも多いようで、そんなことで便宜を図ってもらうようなことは、自分の中の仁義にかけて断じて許せない。

まあでも本当に悪気はなかったし、仕方がない。完全無傷で済み、逆に大学生のうちにそういった場を見ておいたことで社会人になってからは一切そのようなことがなくなり、身の丈に合わない人脈フライングの意味のなさを早めに学べたのでよかった。ある意味ではすごくいい勉強にもなった。

 

同じ人間同士でも、会議室で知り合うのと、穏やかな飲み会で知り合うのと、気持ち悪いパーティーで知り合うのとでは、お互いがお互いに対してもつイメージやその後の人間関係は全く違うものになる。ピカソの絵のあったあの部屋にいた、女の子にシャンパンを飲ませまくっていたお兄さん方も、もしかしたら会議室で知り合ったらピカピカの切れ者だったのかもしれない。業界の穏やかな飲み会で知りあえば気さくないい人だったのかもしれない。

人は誰だって常に完璧なわけではないし、たまには羽目を外して女の子と馬鹿騒ぎしたいときもあるだろう。それは決して悪いことではない。しかし、仕事軸で素敵な人としっかり人間関係を作りたい女性は、先方がそういうテンションの場で、「初めまして」をしてはいけない。そういう場が好きで、普通にプライベートとして楽しめる人なら何の問題もないのだけど、私みたいに「運命の人が現れるまでは手さえ触れられとうございません」みたいなタイプの女は、ノリが悪すぎて先方にとっても迷惑なのでご遠慮申し上げるべきだ。

 

そういうわけで、麻布から会議室へ、つまりチャラい飲み会(先方が遊ぶ気しかない集まり)からビジネスへ、というケースはほとんどないので注意が必要だ。しかし逆に、会議室から麻布というのは素敵だなと思う。なんといっても仕事の場こそその人の能力が発揮されるのであって、仕事という文脈で知り合った人と、仲良くなって麻布なり、恵比寿なりで親しく飲むのはとてもすばらしい。もはやべつにお酒じゃなくても、コーヒーでも、ジュースでもいい。そんな機会は多くはないけれど。大切な人とこそ、だいじに人間関係をつくっていきたいなと思う。